副腎腫瘍
①.副腎とは
副腎(ふくじん)とは左右の腎臓の上に左右1個ずつ存在する3~4㎝の臓器で、外側の皮質と内側の髄質からなります(図)。それぞれ下記に示すようなホルモンを分泌し、血圧や体のバランスの調節などを行っています。
○副腎皮質ホルモン : アルドステロン、コルチゾール、副腎性ホルモン
○副腎随質ホルモン : アドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)
②.副腎腫瘍について
副腎にも他の臓器と同様に腫瘍(しゅよう)ができることがあります。副腎腫瘍は、腫瘍はあるが過剰にホルモンを分泌しない非機能性腫瘍と、腫瘍から副腎ホルモンを過剰に分泌する機能性腫瘍に大別されます。また、良性腫瘍だけでなく悪性腫瘍(副腎がん)ができることもあります。
ⅰ.非機能性腫瘍
通常は症状がなく、人間ドックなどの検診や、他の病気の検査(CTなど)の際に偶然見つかる(偶発腫瘍)がほとんどです。サイズが小さければ経過観察になりますが、サイズが大きい場合には悪性腫瘍の可能性もあるため手術で摘出することがあります。
ⅱ.機能性腫瘍
副腎ホルモンが過剰に分泌されるため様々な症状がみられます。原則、副腎ホルモンを過剰に産生する腫瘍を手術にて摘出します。手術が困難な場合など内服薬にて治療する場合もあります。
a).原発性アルドステロン症
アルドステロンが過剰に分泌されるのが原発性アルドステロン症です。高血圧が主な症状です。CTなどで検出されない微小な腫瘍による症例もあります。最近は患者さんが増加しており高血圧症患者さんのの3~20 % は本症であるともいわれます。
b).クッシング症候群
コルチゾールが過剰に分泌されるのがクッシング症候群です。肥満、高血圧症、糖尿病、多毛などがみられ、女性に多い病気です(男女比 1:4)。
c).褐色細胞腫
アドレナリンが過剰に分泌されるのが褐色細胞腫(かっしょくさいぼうしゅ)です。高血圧、動悸、発汗などが主な症状です。突発的な高血圧発作を引き起こすことがあり注意が必要です。また、副腎以外の場所に腫瘍ができることや、悪性である場合(悪性褐色細胞腫)がそれぞれ約10%あります。
ⅲ.副腎がん
発見時に腫瘍サイズが大きいことが多く、手術や化学療法(抗がん剤による治療)などが行われます。
③.副腎腫瘍の治療(手術)について
手術により副腎腫瘍を摘出する場合、以前は脇腹を15~20㎝程度大きく切開して行っていた為、術後の傷の痛みや傷跡が大きいといった問題がありました。最近では一部の症例を除いて内視鏡(カメラ)を用いた腹腔鏡下手術が一般的に行われています。腹腔鏡下手術では1か所が5~10㎜の傷、3~4か所よりトロッカーと呼ばれる筒状の器具を挿入し、そこから内視鏡や鉗子を入れてモニターを見ながら手術を行います。腫瘍は傷の1か所を数㎝延長し摘出します。腹腔鏡下手術は傷跡が小さく、術後の回復も早く、傷の痛みも軽度です。
当科でも腹腔鏡下手術を標準的に行っており、これまでに○○例を超える数多くの症例を経験しています。また現在では、25㎜の傷1か所のみで手術を行う単孔式腹腔鏡下手術(LESS: Laparo-endoscopic single site surgery)を2009年より導入しています。通常の腹腔鏡下手術と比べて傷跡も目立たず、整容性に優れた手術方法です。