前立腺癌
前立腺は膀胱に隣接する男性特有の臓器です。したがって、前立腺癌は男性にのみ発生する悪性腫瘍です。
日本人男性の平均寿命の延長、食生活の欧米化にくわえPSA(前立腺特異抗原)検査の普及に伴い、日本人男性における前立腺癌患者数は増加しています。PSA検査が普及するまでは、骨やリンパ節などに転移した状態で発見されることの多い病気でしたが、最近ではPSA検査の登場により、前立腺に癌が限局した早期癌の状態で発見できるようになりました。早期癌の状態では症状はないのが、前立腺癌の特徴です。
前立腺癌の治療はPSA値、病理学的所見(生検)、画像診断(CT、MRI、骨シンチグラフィー)、年齢、生活様式などを総合して治療法を決定します。前立腺に限局した早期癌の場合、根治療法の適応となります。根治療法としては手術療法と放射線療法があります。一方、前立腺の周囲まで癌が広がっているような場合やすでに転移している場合には、内分泌療法(ホルモン療法)の適応です。
①.手術療法
下腹部を縦に10センチほど切開して、骨盤の奥にある前立腺と精嚢腺を摘出します。前立腺は尿道括約筋に接するため、手術後に一時的な腹圧性尿失禁を生じる場合があります。
また勃起神経(陰茎海綿体神経)が前立腺周囲を走行しているため、手術後の勃起不全が生じることもあります。しかし、手術は他の治療法よりも成績がよく、また摘出標本を詳細に観察することができるため、追加治療の必要性などを知ることができなど利点の多い治療法です。
入院期間は10-14日程度です。当科では、体にやさしい手術(小さな傷の手術)を目指しており、2011年からは腹腔鏡手術、2012年からはロボット手術を計画しています。
②.放射線療法
放射線療法は体の外部から照射する外照射法と前立腺内に放射線の入ったカプセル(線源)を挿入し内部から照射する内部照射(小線源療法)の2種類があります。
外照射は約2ヶ月間にわたって連日放射線を照射する方法です。治療中の有害事象としては、頻尿、下痢などを生じる場合があります。また放射線照射後数カ月経過したころから、血便、血尿といった症状がでることもあります。
一方、小線源療法は3泊4日の入院で治療可能でありますが、20本程度の針を用いて線源を永久的に前立腺に挿入するため、治療には麻酔が必要になります。外照射と同様の有害事象が報告されていますが、頻度は外照射よりも少ないようです。
③.内分泌療法 (ホルモン療法)
精巣腫瘍に対しては迅速な診断と迅速な治療が必要です。精巣腫瘍が疑われた場合は、早急に適切な手術が行うことができる協力体制の整った病院での治療が望まれます。
実際は、患者様ひとりひとりの進行度にあわせて、上記の治療にくわえていくつかの治療法を組み合わせる場合もあります。