精巣腫瘍
精巣腫瘍は働き盛りの男性(40歳未満の罹患が全罹患数の約3分の2を占める)の精巣に発生する悪性腫瘍です。
多くの場合、痛みや発熱を伴わない陰嚢の腫大に気付くことで発見されます。常に気をつけて精巣の大きさに注意していない限り、精巣腫瘍が小さい時期に自分で発見することは困難です。精巣腫瘍が疑われた時には、非常に速く増殖し、転移しやすいという特徴がありますので、診断の意味も込めて直ちに精巣を摘出する手術をします。
以前は多くの患者さんが亡くなっていた病気ですが、最近では手術療法と効果の高い化学療法の併用で、転移のある精巣腫瘍でさえも8割から9割の確率で治すことが出来るようになってきました。
それでもなお、化学療法がなかなか効かない精巣腫瘍もあり、色々な工夫をして根治を目指す試みがされています。
当科の精巣腫瘍治療における特徴
⑴.迅速な診断とチーム医療
精巣腫瘍に対しては迅速な診断と迅速な治療が必要です。精巣腫瘍が疑われた場合は、早急に適切な手術が行うことができる協力体制の整った病院での治療が望まれます。
また、適切な抗癌剤の使用が出来る経験豊富な泌尿器科チームが必要ですし、放射線療法なども加えた集学的治療を行う協力体制が整った当科では、患者さんにとって最良の治療が提供できると考えています。
⑵.化学療法について
現在はブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの3剤併用化学療法(BEP療法)が初期化学療法として効果が確立され、一般的に第一選択となっています。しかし、転移のある精巣腫瘍の中で2~3割では、このBEP療法だけでは腫瘍マーカーの正常化が得られないことや転移巣の縮小を得られないこともあります。その場合にはビンブラスチン、イホスファミド、シスプラチンの3剤併用療法(VeIP療法)やパクリタキセル、イホスファミド、シスプラチンの3剤併用療法(TIP療法)などを行っています。このようにいくつかの化学療法を組み合わせて行っているのも当科の特徴です。