前立腺肥大症
①.肥大した前立腺により排尿障害が起こる病気です。
前立腺は男性だけにある臓器で膀胱のすぐ下にあり、尿道の周りを囲んでいます。正常な前立腺は栗の実くらいの大きさで、重さは成人男性で20g前後です。前立腺は殆どの男性が50歳を過ぎた頃から肥大して大きくなります。肥大する原因としては、様々ありますが、いまのところはっきりわかっていません。
②.ステージ(病期)によって症状が変わります。
○第1期 刺激期
□排尿が非常に近くなった
□排尿しても、すぐにまた行きたくなる
□夜間に何度もトイレに起きる
□急いでトイレに行かないと漏れそうになる
などといった症状が刺激症状にあたります。これは、肥大した前立腺が尿道や膀胱を圧迫し刺激するために生じます。
○第2期 残尿発生期
□尿意をもよおし、トイレに立っても尿がなかなか出てこない
□排尿をする時に息まないとなかなか排尿できない
□途中で尿がとぎれてしまう
などいった症状が閉塞症状にあたります。これは肥大した前立腺のため尿道が圧迫され細くなっているために生じます。
○第3期 慢性尿閉期
さらに症状が進むと尿が全くでなくなります。風邪薬など他のお薬、飲酒(前立腺にむくみが生じるため)などをきっかけに突然でなくなる人もいます。尿が出なくなり、下腹がパンパンに張り、非常に苦しい状態です。
③.診断方法
症状を判定するために"国際前立腺症状スコア"と呼ばれる問診表を用います。
合計点数が7点以上であれば前立腺肥大症の可能性が出てきます。症状スコアにて、前立腺肥大症が疑われるときは下記のような検査を必要に応じて行います。
□直腸診 (お尻から前立腺を触れて、肥大や炎症があるか判断します。)
□超音波検査 (下腹にエコーを当てて前立腺の大きさや残尿の程度を調べます。)
□尿流量測定 (排尿の勢いの検査)
□レントゲン検査 (造影剤を使用して腎臓への影響や尿道の圧迫具合などを調べます。)
④.治療方法
治療は病気の程度、年齢にあわせて選択します。
すなわち、自覚症状も軽度で、上記の検査でも程度がひどくないと思われるものについては経過観察のみを行う場合もあります。
前立腺肥大症による症状は、多くの場合薬物治療にて軽減することが出来ます。ただし、薬物治療は前立腺の肥大を根本から治すといった治療ではなく、症状を和らげてやるという対症療法にあたります。
薬物治療では、症状の改善が望めない場合には、手術による治療が必要となります。
前立腺肥大症に対する手術の最も一般的な方法は、経尿道的前立腺切除術(TUR-P)と呼ばれる方法で、内視鏡という非常に細いカメラで見ながら行うであるため、全く腹部に傷はつきませんし、術後の痛みも軽度で、早期退院が可能です。更に当科ではTUEB(経尿道的バイポーラ電極前立腺核出術)といわれる方法も行っております。同じく内視鏡を尿道から前立腺に通し、レーザーを用いないで腺腫を剥離、切り離(核出)する方法です。出血量を少なくすることが可能です。前立腺が非常に大きな場合には、開腹による手術が必要になります。大きな前立腺に対しては有用性も高く、長期効果も期待できる方法です。