小児
①.停留精巣
精巣が陰嚢に降りてきていない病気で、男児100人に1人に認められます。胎児期に精巣はお腹の中にあり、出生時には陰嚢まで下りてくるのですが、これが何らかの原因のため途中で止まってしまった状態です。
生後6カ月を過ぎると自然下降が期待できないため、手術による治療を行います。鼡径部(足のつけね)に約2cm、陰嚢に約1cmの切開をして、精巣を陰嚢内に固定します。現在は2才までの手術が勧められており、当院でも1才前後で多く行っています。
触診で精巣が触れない場合には、MRIや腹腔鏡検査をまず行って精巣の有無を確認することがあります。
②.水腎症
水腎症は腎臓で作られた尿がたまって尿路(尿の通りみち)が拡張した状態をいい、よく「腎臓がはれている」と表現されます。原因としては尿路に狭いところがあって尿の通過障害が起こっている場合と膀胱に一度たまった尿が逆流している場合があります。
最近では妊婦健診や乳児検診で無症状のまま発見される頻度が高くなっています。程度の軽いものは自然に軽快することが多いため、超音波検査で定期的に診察をして経過を見ていきます。しかし、尿の通過障害があって腎臓の機能が障害される場合や拡張が強く腹痛や嘔吐など症状がある場合には手術が必要となります。
③.膀胱尿管逆流症
腎臓で作られた尿は腎盂、尿管を通り膀胱にたまってから尿道を通って排泄されます。この流れは本来一方通行ですが、膀胱と尿管のつなぎ目が弱い場合に逆流が起こります。逆流があると膀胱内に入り込んだ細菌が腎臓まで上がることで腎盂腎炎を起こし、高熱がでたり、敗血症となることもあります。また腎盂腎炎を起こすと腎瘢痕という傷が腎臓に残り、働きが低下していきます。診断には排尿時膀胱尿道造影というレントゲン検査が必要になります。また腎臓への影響をみるために腎シンチという検査も必要となります。
逆流は成長とともに自然に消失する可能性があるため、抗生物質を一日一回飲み続けて感染を予防しながら経過をみる方法を初期治療として行います。この間にも腎盂腎炎を繰り返す場合や経過を見ても改善傾向のない高度な逆流は手術の適応となります。手術は開腹して膀胱と尿管をつなぎなおす逆流防止術を行います。逆流の消失率は95%以上であり確実性の高い手術です。現在は内視鏡による注入療法も行われています。
④.尿道下裂
男の子の先天的なおちんちんの形態異常で、①尿の出口が先端になく途中で開いているため立位排尿が困難②おちんちんが下向きに屈曲しており、まっすぐに勃起しないため将来の性生活に問題が生じるといった症状があります。治療は手術しかなく、おちんちんをまっすぐにすることと、尿の出口を先端までもってくること(尿道形成)を目的とします。尿の出口が陰嚢や会陰部(肛門のちかく)にある場合には2期に分けて手術を行いますが、通常は1期的に行います。難易度の高い手術であり、くりかえし再手術が必要になる場合があります。合併症は主に形成した尿道の問題で、出口や通り道がせまくなる狭窄、尿道の一部に穴があく瘻孔、先端が開いて尿道が後退するなどがあります。